おかしな具合になっている暇が無い

「おかしな具合になっている暇が無い」は、ドイツの精神医学者クラウス・デルナー博士が編著を行っている精神障害者の治療に関する書籍「来るのが遅いよ」の中の一文です。ドイツ西部のギューテルスローにあるLWL精神病院の院長を務めていたデルナー博士は、居住医療への転換と成った逸話をまとめています。タイトルは、その逸話のものです。1984年予て入院治療に疑問を持っていた博士は、26人の患者へ外国旅行を実施しました。行き先はユーゴスラビアの保養地です。目的は患者に病院以外の生活を体験させることでした。患者は長期入院の人たちで長い人は、50年に亘っています。病院内には約60の施設が有り、治療棟、入院棟、食堂、体育館、プール、娯楽棟、教会、墓場等があり集落を形成しており、一生をここで送ることができるものです。そこを脱して一般の生活をしてみるという実験でした。一週間の滞在は、患者の人生を大きく変えることになります。誰かから世話をされるという入院生活から、滞在の準備から滞在中の生活まで全て自分でやらなければならない状況に置かれ、患者たちは自立を体験しています。この自立の中でおかしな具合になっている暇が無く成ったのです。これを期に、街で暮らしたいと希望する患者が次々に現れてきたのです。診療よりも住まい探しで忙しくなった、とは博士の弁です。

この後デルナー博士は、地域で暮らし、地域で働き、地域の人たちと交わる居住医療の先鞭をきっています。21世紀に入ってポスト精神医学という考えに基づいた治療がヨーロッパで拡がっています。精神病院から入院ベッドを無くし、新たな居住医療システムが構築されているのです。治療の中心を病院から、街中にするものです。この中から精神障害者が、非障害者と共に働く社会が広がっています。詳しくはwww.jk-s.co.jpの新着情報をご覧下さい。

播磨守

 

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