月別アーカイブ: 2018年11月

IT技術職の就労が続いています

今秋9月10月11月は、毎月1名のIT技術職の就労が実現しています。何故続いているのか、考えてみました。ベルーフは、長く安定して働くがモットーです。そのための要件として専門職を目指しています。特にIT分野に特化しております。当社は研修カリキュラムは20有余有ります。ITはリテラシーからデータサイエンスまでをカバーし、職業指導員も経験豊かな専門家を擁しています。このカリキュラム構成は、他では追随出来ないと自負しております。利用者の方々はIT技術についての経験はバラバラです。しかし、平均16.1ヶ月の取組みで専門的な基礎技術を身に付けています。

9月のTさんは30代です、前職で多少の経験はありますが、ベルーフで本格的に学び、C言語に徹底的に取組んでいます。採用理由はプログラミング技術への評価です。10月のMさんは、20代で実務経験は有りません。ベルーフでは障害特性のため就労まで2年を超えています。採用理由はプログラミングの力量と業務姿勢です。11月のKさんは、ITでの業務経験はありません。一度開発会社に就職しましたが、体調を崩し退職を余儀なくされ、ベルーフで再チャレンジを目指しています。半年後、ITエンジニアとして採用されました。採用理由はITリテラシーの基礎技術力です。採用に弾みが就いているのは、昨今のIT業界の人手不足、人材不足も背景として考えられます。ただ安易に追い風と考えるのは早計です。精神障害者のIT業務能力への評価は厳しく、採用のバーは未だ高いのです。従って、採用されるに足るIT技術力を備えていることが絶対条件です。これが、採用が続いている理由です。

播磨守

 

 

19人目の就労者です

ベルーフに取っては19人目の就労者が誕生しました。Kさんは、実は二回目の就労です。2016年11月にITの開発会社にベルーフから就労しています。技術者としての採用でした。しかし2018年3月に退職しました。体調不良が直接の理由ですが、ここに至るまでの道のりは、彼には大きな心の負担だったようです。4月からベルーフで再チャレンジに取組んでいます。体調の回復、勤怠の安定、心の再生、まなびの復活、どのテーマもこつこつ地道に取組まなければ成りませんでした。5ヵ月後に漸く自信が持てる様に成っています。夏の終りに、今後どうするかの詳細計画を立てています。2019年3月就労がゴールです。そのために、10月は自信回復の仕上げとして国家資格挑戦、その後は就労活動開始、企業アプローチ50社が目標です。ハローワークへの定期訪問、企業への直接アプローチ、と計画通りの動きを取っています。不採用にもたじろぐことなく、この方法では駄目だったと新たな工夫を凝らした行動が続きます。11月に入って、彼の第一希望であるT社から面接のお知らせが来ました。適性診断から一時面接を終え、社長面接に進んでいます。翌日、共に働きたいとの内定の知らせが届きました。入社は新卒扱いの4月1日です。計画を立てて実行した通りの成果です。ビジネスは再チャレンジあり、を地で行ったのです。

播磨守

 

 

データサイエンス入門が始まります

データサイエンティストの需要が高まっています。ベルーフでは統計学を基礎とした「データサイエンス入門」研修を実施します。経営工学と統計学を専門とする桜美林大学名誉教授のF先生の担当によるものです。データサイエンティストの育成をライフワークにしたいとのお志です。この研修は推測統計学が主題です。ハイライトは統計的仮説検定法の理論のマスターと実例によるシュミレーションです。

最後の課題は仮説検定法のテキストを作成するものです。自分の理解した理論を自分の思考と言葉でオリジナルで創るのです。難しい課題ですが、コピーにまみれた学び方ではなく、自分で創造するという面白さを深く味わうことができます。自分は何をマスターしたのか、その奥行きを知ることができるのも面白さのひとつです。本屋には山ほど統計学とデータサイエンスの本が並んでいますが、研修に依る生きた学びの醍醐味は、到底味わえるものではありません。来たれ、まなびすと!

播磨守

 

ベルーフの由来

事業所名ベルーフはドイツ語のBerufです。仕事と言う意味です。Arbeitアルバイトも仕事と言う意味ですが、仕事全般を指しその中で二種類に分けられます。一つはBerufベルーフで3年以上の教育を受けて就く仕事です。もう一つはJobジョブで経験を積んで就く仕事です。ベルーフの方が社会的なステータスが高く、待遇も良いです。安定して長く働くためにベルーフを目指そうと言うのが由来です。当社ではベルーフを専門職と訳しています。ドイツでは専門職は310種類21区分に分類分けされており、ドイツ商工会議所がそれぞれの専門職の基準を定め、資格認定を行っています。障害者もこの資格認定の対象です。ドイツのベルリンで、精神障害者が専門職を目指して研修訓練に取組んでいるレーベンスベルテンという機関で、その様子をつぶさに見る機会がありました。調理師を目指している若い女性でした。トレーナーとマネージャーが2人掛かりで指導していました。緊張感にあふれた現場で、彼女の緊迫した真剣な表情が、強く印象に残っています。3年後、コック姿で調理場で働いている彼女の姿がfacebookに掲載されています。

播磨守

MKさんの就労

MKさんが11月05日(月)M社に初出社しました。これに至るには2年4ヶ月かかりました。自閉症スペクトラムが彼の障害名です。体の動きとコミュニケーションから一見して障害が分かります。子供の頃から頭は良かった、とは家族の弁です。特に数学的才能が優れており、大学は機械工学を専攻し、流体力学、統計学などを学んでいます。1年間の引きこもりの後クリニックからの紹介でベルーフの利用を始めました。外面的な障害を改善するのには、一年以上の年月がかかりました。更に仕事が出来るようになる、という課題もあり、就労活動ができるようになるまで様々なテーマに取り組んでいます。就労での面接は彼にとっては不利でした。外見から障害の重さを判定されるため、選ばれないのです。

そこで、実習作戦を取ることにしました。会社の現場での実習で、仕事の出来を評価して貰うという作戦です。これは功を奏しました。仕事ができるとはどの実習先でも得られた評価です。内定も出ましたがエンジニアになるという志望を叶える先ではなく、辞退しています。9月M社から実習のチャンスを得ることができました。現場ではプログラミングの取り組みと仕事への姿勢を評価され、社長面接、内定とゴールしています。晴れてIT技術者の道を得ることができました。MKさんはベルーフでは試金石でしたが、障害者手帳2級クラスへ専門職の道を切り開いた例として後に続く人たちに希望をもたらしています。
播磨守

 

火曜日のカリキュラム

火曜日の午後は、統計の基礎と文章教室の二つのカリキュラムが、並行して行われます。まるで毛色の違うものですが、ご紹介します。

統計の基礎はデータサイエンスを学ぶためのものです。データサイエンスは、統計学をベースにしていますのでここから出発します。統計学は記述統計学と推測統計学によって構成されますが、最初は専ら記述統計学を学び、データを扱うための手法を身に付けます。初心者にとっては、統計学特有の理論を理解することに取組みます。最初の関門は、用語を理解することです。平均、分散、標準偏差、中央値、度数分布、共分散・・・・読めるけど意味のイメージが掴めない状態がしばらく続きます。10回ぐらい受けると、何とか掴めてきます。

文章教室は思考力を鍛えるのが目的です。物事をコピーして理解することが簡単にできる時代です。従って、自分で考えるという思考習慣が、かなり衰退しているようです。ベルーフのカリキュラムは思考力を要求されます。毎回ノンフィクションやエッセイや小説からの文章を読み、受け止めたことを書きます。オリジナルのタイトルをつける、400字以上、と言うのがルールです。本日は工藤美代子作「地下鉄の老女」です。人間観察の視点がテーマです。人間の知恵の構造はどうなっているかは未知ですが、統計の基礎、文章教室共に知恵の働きが向上するというのは、これまでの成果からいえる事実です。

播磨守